横歩取りの出だしからは、浮き飛車や青野流、または横歩を取らずに▲58玉や▲68玉、▲28飛など先手に多くの選択肢があります。
特にその中でも青野流の研究が進んだことによって、プロ棋戦では後手が横歩取りを避ける傾向にあるようです。
しかし、アマチュアの対局ではそこまで激減したという印象でもありません。
むしろ横歩取りが苦手で先手番でどう回避するか悩んでいる人が少なくないのではないでしょうか。
本稿では 7 手目に 58 玉と上がる指し方について紹介します。
これはもともとネットの対局で私が後手を持ったときに相手が指してきたことで知った手です。ちなみに、私はこの手を紹介している書籍を知りません。-----
(2022年4月23日加筆)
58玉は2018年に発売された西尾明先生の「コンピュータは将棋をどう変えたか?」で触れられていました。書籍では本稿と異なる変化を解説しているようです。
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プロの実戦例はわずかにあるようです。
下図のように▲78金と△32金が入っていない 7 手目に▲58玉と上がってしまいます。
これに対して後手は△32金か△86歩、△52玉などが考えられます。
私の経験では△32金とする人が多いようです。
それに対しては 2 筋の歩を交換します。(下図)
△88角成から△33角と両取りの筋が気になりますが、それには堂々と▲21飛成として、▲77角(下図)と角を合わせて対応します。
これは後手だけ金を上がっているため▲24桂から攻められるのが大きく、既に先手有利です。
上図で△77同馬▲同桂△86歩なら▲65桂と左の桂馬を使う筋もあります。
少し気になるのは先に△86歩の突き捨てを入れておいてから△88角成▲同銀△33角を決行する手ですが、この場合は角を合わせずに▲24桂(下図)と打てば先手有望です。
33角が成立しないとなると後手は穏やかに進めるしかありませんが、例えば飛車先を交換した場合には、むしろ先手から角を交換して▲77角(下図)と打つ手があります。
※当然、角を換えず▲78金で穏やかに指せば普通の58玉戦法に合流します。
自然に指せば△82飛▲83歩△52飛▲34飛△33銀(※1)▲84飛△72金(※2)▲38金△54歩までは進むと思います。
※1. △33歩▲84飛△27角もある。
※2. △27角は▲33角成~▲82銀で先手良し。
ちなみに、 8 手目で後手が 32 金を上がらずに飛車先を交換してきた場合にも、すぐに▲22角成△同銀▲77角と打てば同じ変化に持ち込めます。
その後の進行の一例として後手が△55歩~△44銀とした場合に▲22歩(下図)と打つ手があります。
△同金には▲86角とのぞきます。
これに△32金と戻れば互角ですが、△41玉などとするとすかさず▲44飛(下図)と切り飛ばして、43へ銀を打ち込む手が生じます。
この戦法は後手が正確に対応すれば互角以上に戦えますが、初見で対応するのは難しいところがあると思います。
一方で先手は△33角への対処と▲77角~▲83 歩の指し方だけ覚えればある程度戦えます。
横歩取りで研究勝負を挑んでくる相手への対抗策として、選択肢に加えるのは大いにアリなのではないでしょうか。
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